静岡の茶草場農法は世界農業遺産

静岡の茶草場農法は、2013年に世界農業遺産として認定された、静岡県に特徴的に見られる農法です。高品質な茶の生産のみならず、豊かな生物多様性の保全にも繋がっています。 このように、農業と生物多様性が同じ方向を向いて両立していることが世界から注目され、高く評価されるようになりました。ここでは、そんな静岡の茶草場農法についてさらに詳しく知っていきましょう。

茶草場農法とは

茶草場農法とは、茶園の畝間にススキやササを主とする刈敷きを行う伝統的農法のことをいいます。良質茶の栽培を目的に、全茶農家の方々が手間ひまをかけて草を刈り、乾燥させます。その後、細かく刻んで茶畑の畝間に敷き詰める伝統的な農法です。この茶草によって、茶の味や香りが良くなると言われています。

茶草場で刈り取る草の中で代表的なものは「ススキ」です。ススキは10~20年ほどの長い時間をかけて土に還ります。「ススキ」が分解されて出来た土は、手にとるとふんわりと崩れてしまうほどやわらかいのです。茶草場のある茶園では、その土で茶の木の根元を覆い、茶栽培が行われています。良い土づくりのためには茶草が必要で、茶草を敷くことで茶樹が元気で、力強い芽が出て、美味しいお茶になるので、この茶草場は非常に重要なのです。

茶草場農法の利点

・肥料持ちが良い 
・水はけが良い(雨が降っても弾力がある)
・雑草を抑える
・夏は保湿、冬は保温効果
・茶草が分解されることで有機堆肥となり、茶の生育や味・香りがよくなる
 上記のような利点があると、茶樹にストレスを与えにくく元気な茶樹が育ちます。茶草の代表的なものが「ススキ」で、繊維質が固いが分解されると弾力性が出て、空気が中に入りやすく、茶樹が根っこで窒素を吸いやすいのでとても適しているのだそうです。

茶草場農法は里山の草地の環境を守り続けている

希少な「秋の七草」を茶草場で見ることができる

たとえば、茶草場に見られる代表的な希少植物に「秋の七草」があるります。 秋の七草は、山上憶良が万葉集で詠んだ「萩の花(ハギ)、尾花(ススキ)、葛花(クズ)、なでしこの花(カワラナデシコ)、女朗花(オミナエシ)、また藤袴(フジバカマ)、朝豹の花(キキョウ)」の歌で知られています。 秋の七草は、古来より日本人に親しまれた奇跡の風物詩ですが、草地環境が減少した現代では、 七草のうち、カワラナデシコやオミナエシ、フジバカマ、キキョウの四種が野生条件では絶滅が心配されるまでに減少しています。 ところが、これらの秋の七草のすべてが静岡県の茶草場で見られるのです。

静岡の茶畑周辺では様々な花を見ることができる

初夏にピンク色の美しい花を咲かせるササユリも、多府県では絶滅が心配されていますが、。静岡県では、茶畑の周辺で可憐に咲くササユリをよく見かけることができます。さらに、秋の七草やササユリ以外にも、リンドウ、ホトトギス、ワレモコウなど、茶草場で見られる植物は、茶の湯の席に活けられる茶花が多く見られます。 「茶草」を活用した茶生産が、失われつつある「茶花」を守り伝えてきたというのも、素敵ですね。

茶草場に生息する虫がいる

茶草場のある代表的な場所の一つ「掛川市粟ヶ岳(あわがたけ)」中腹では、「カケガワフキバッタ」という虫が存在します。この虫は、決して広くないこの地域だけに生息していて、カケガワフキバッタの良好な生息環境を保つためには、「定期的な草刈りと草の搬出で遷移の進行を抑制すること」が必要といわれているのです。

半自然草地が作り上げる、豊かな里山

人の手によって維持管理されている草地環境は「半自然草地」と呼ばれています。 人の手が入って、草を刈ることは、一見すると自然を破壊しているようにも見えます。しかし実際には、人の手が適度に入った里山環境では、多くの生物種が生息することが知られています。 草を刈らずにおくと、生存競争に強い植物ばかりが生い茂ってしまうので、生息できる植物の種類はかえって少なくなってしまいます。 一方、定期的に草を刈り取ることによって、大きな植物が茂ること無く、地面まで日の光が当るので、生存競争にも弱いさまざまな植物が生息をすることができます。 そのため、里山の草地ではさまざまな植物が生息して、豊かな生物多様性を作り上げるのです。

地域全体で草刈場の活用を行っている掛川市東山地区は、茶園と茶草場の割合が10対7の割合で茶草場が分布しています。茶園の周辺にはこれだけの「半自然草地」が維持されているのです。草を敷くことによって、茶の品質がよくなることから、茶農家の方々は手間ひま掛けて、草を刈り、草を敷いてきました。 この茶づくりのこだわる思いが、日本から失われつつあった里山の草地の環境を守り続けてきたのです。

「静岡の茶草場農法」が世界農業遺産に認定

より良質なお茶を生産しようとする茶農家の方々の努力により、茶草場の生物の多様性も保全されてきたことが高く評価され、「静岡の茶草場農法」として2013年世界農業遺産に認定されました。世界農業遺産は、正式名を世界重要農業遺産システム(Globally Important Agricultural Heritage Systems:GIAHS ジアス)といい、2002年(平成14年)、「国際連合食糧農業機関」(FAO、本部:イタリア・ローマ)に始まった取り組みです。農業がだんだん近代化することにより、失われつつあるその土地の環境を生かした、伝統的な農業・農法、生物多様性が守られた土地利用、農村文化・農村景観などを「地域システム」として一体的に維持保全し、次世代へ継承していこうというものです。

より良いお茶の生産をするために、茶草場農法により、茶農家が茶園周辺の半自然草地、すなわち茶草場の草を刈り取り管理することで、生物多様性保全が守られるという、生物多様性保全と持続的な自然と共生する農業生産活動の面で評価されました。

手間ひまかけて育った茶葉は、葉が大きくて柔らかく、葉肉が厚いのが特長です。甘味・コクを引き出し、苦渋味を抑えまろやかさを前面にだす深蒸し製法で製造します。味わいは深み、香り・コクがあり、渋味から甘みへと口の中で広がります。おいしいお茶づくりのために“ひと手間”かけられた商品を、ぜひ味わってみてください。